コスパ良く高断熱をかなえる

高断熱の家というと、分厚い断熱材やずっしりとした玄関ドアを思い浮かべるでしょうか。もちろん断熱材は厚さが増すほど断熱性能は増しますし、薄いドアよりも断熱ドアのほうが熱を遮断してくれます。

しかしそれは、パーツ単体の設計上の数値での話です。住宅はたくさんの部材と複雑な構造で組み上げていきます。さらに気象条件や立地・方位といった外部からの影響も受けます。

やみくもに高性能なパーツだけを組み合わせても、コストが上がるばかりで暖かい住まいにはなりません。どこにどの素材をどのように使うか、それを考えるのが工務店の断熱設計です。

的確に断熱設計がされた家は、実は性能の低い家よりも”お得”に暮らすことができます。

上越の高断熱住宅

暖かさの基準「断熱等級」

住宅の断熱性能をランク分けする指標は3つあり、それぞれ下図のように相関しています。

  • 民間(一般社団法人2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会)が定める「HEAT20」
  • 経済産業省が定める「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」
  • 国土交通省の住宅品確法で定められている「断熱等性能等級」
断熱等級の比較

等級区分の基準となっている「UA値」とは

「UA値」とは、住宅の内部から外部に漏れ出る熱量を、建物の外皮(外壁・天井or屋根、床、窓や玄関ドア)の面積で割った値です。つまり、漏れ出る熱量が小さいほどUA値の値は小さくなり、冬でも暖かい住まいと言えます。

UA値は、車で例えるなら”燃費”のようなものです。新車を買う時に”燃費”を確認するように、家を建てたり買ったりする場合には必ずUA値を確認してください。本当に暖かい家づくりをしている会社は、必ずUA値を開示しています。逆に、UA値を開示していない会社は、断熱性能を重視していない可能性が高いと言えます。燃費を言わないメーカーの車は買えないですよね。

横尾建設工業WOOD VILLAGE のUA値

コスパ良く性能を上げるには「窓」が最優先

暖かい住宅をつくるうえで断熱材はとても重要です。しかし、いくら断熱材の性能を高くしても、家全体の断熱のバランスが悪ければ、コストが上がるばかりで暖かさは増しません。

コスパで考えると断熱材よりも窓の断熱性能を上げるほうが効果的です。

なぜなら、壁から逃げる熱よりも窓から逃げる熱の割合が圧倒的に多いからです。冬は壁からの熱損失が7%なのに対し窓からの熱損失は58%、夏は窓からの熱の侵入が73%も占めます。

暖かい家にするためには窓の断熱性能を確保することが最優先です。

高断熱住宅の考え方
図2-2
高断熱住宅の熱損失の割合
図2-3
高断熱住宅に使われるトリプル樹脂サッシ
図2-4
高断熱住宅の付加断熱
図2-3

断熱にこだわりたい人には「付加断熱」

在来工法の木造住宅では、外壁の壁の中に断熱材を入れる「充填断熱」が一般的です。Wood Villageの家ももちろん壁いっぱいに断熱材が入っているので、「断熱窓+充填断熱」でUA値0.4(6等級)レベルの暖かさを確保しています。

ただ、もっと断熱にこだわりたい!家づくりの優先順位がとにかく暖かいこと!という方には「付加断熱」をお勧めしています。

付加断熱とは、充填断熱を入れた外壁のさらに外側に断熱材を施す工法です。壁の厚みが増すので外観に少し影響が出ますが、付加断熱まで追加するとUA値0.3を切る7等級レベルの暖かさを実現できます。

断熱性と同じぐらい重要な「気密性」

住まいを快適な環境に保つには、断熱性だけではく「気密性」も重要です。気密性とは、家の隙間をどれぐらい少なくできるか、という性能で「C値(シーチ)」という値で表すことができます。C値は設計で算出するのではなく、建てた家で1棟1棟実測をします。そのため現場の施工技術も大きく影響します

C値の最低水準については今の日本の住宅には特に法律がないので、C値を公表していなかったりそもそも計測していない住宅会社もありますが、暖かい住まいのためにはC値の測定は不可欠です。

いくら断熱材を厚く施工しても、隙間があっては家は暖かくなりません。また、室内の空気を清浄に保つ「24時間換気」も、隙間が少ない住まいのほうがより効果的に機能します。暖かい住まいには、断熱性と気密性の両軸が揃っていることが重要です。

高断熱住宅の気密性
図2-3
上越の高断熱住宅に住む家族
上越の高断熱住宅のリビング
上越の高断熱住宅の掘りごたつ
上越の高断熱住宅のキッチン

高断熱な住まいと「健康」の関係

住まいの冷暖房方法3種類

冷暖房の方法には、「各室間欠」「各室連続」「全館連続」の3種類があります。今までの日本の住まいは「各室間欠」が一般的でした。「部屋を出る時はエアコンを消しなさい」と言ったり言われたりしたことがある方も多いのではないでしょうか。

最近では住宅の断熱性能が向上するにつれ、「各室連続」で冷暖房するパターンも増えてきました。「エアコンは24時間つけっぱなしのほうが電気代が安くなる!?」という話題が注目され、「検証してみた」というSNSの投稿が流行りました。

もちろん検証結果には「電気代が安くなった」人と「高くなった」人がいて、これは住宅そのものの断熱性能が違うので当然と言えば当然ですね。断熱性能の低い住宅で24時間エアコンをつけっぱなしにすれば、エネルギーを垂れ流し続けるだけです。

各室冷暖房と全館冷暖房
厚生労働省人口動態統計
出典:厚生労働省人口動態統計

身体の健康には全館連続冷暖房

さらに断熱性能を上げ、「全館連続」でエアコンをつけっぱなしにしても電気代が抑えられる住まいが、当社が取り組んでいる「松尾メソッド」の家です。

居室を24時間冷暖房するだけでも「快適」に暮らすことはできますが、当社が「全館連続」冷暖房にこだわる理由は、健康面でのメリットです。

家の中で暖かい場所と寒い場所があると、身体への健康リスクが高くなります。暖かい部屋を出て寒い脱衣室で服を脱ぎ熱い風呂に入浴するとヒートショックを起こすというのは有名な話です。

慶応大学の研究室発表した論文によると「脱衣室の温度が2℃上昇すると介護期間が4年短縮できる」という驚きの研究結果が出ているそうです。この研究は介護する人・される人の精神的、金銭的負担だけでなく、国全体として毎年数十兆円と予算が組まれている医療費・介護費に着目しており、住宅の有り方が国の財政に大きく影響することまで言及されています。

暖かい住まいに暮らすと健康になる理由

住宅の断熱性・気密性について長年研究を続けている近畿大学建築学部の学部長・岩前篤教授は、断熱性能の高い住まいのメリットを、下記のように説明されています。

高断熱住宅のメリット1
ヒートショックを予防

急激な温度変化は心筋梗塞など深刻な病気の原因に。高断熱の家なら温度差が小さく、それらのリスクを軽減します。

高断熱住宅で暮らす健康な人
運動不足を解消

家が暖かいほど活動が活発になるという調査があります。健康と深く係わる運動量が日常生活の中で増える傾向に。

高断熱住宅で暮らす子供
着衣量を軽減

着衣量が減ると衣類からの刺激が少なくなり、アトピーなどの肌トラブルが改善されるという調査結果が出ています。

高断熱住宅で眠る
肺の免疫機能を維持

厚着や布団で体を温めても、冷気を吸い込み肺が冷えると免疫機能が低下。暖かい家は冬でも肺への負担を軽減。

高断熱住宅のカビ対策
有害なカビを抑制

家の中の温度差を無くし適切な換気計画で空気を循環させることで結露しにくい住まいに。有害なカビの発生を抑制。